鍵修理・交換受付センター

父から託されたこのカギは何のカギ?

father_key小さな輸入商社をやっている父の会社は、数年おきくらいに有明の展示場で開かれる展示会に出展している。日本では誰にも知られていないような弱小商社だが、展示会ではなぜかいつも大きなスペースが与えられ、お客さんのほどんどは外国の人たちだから、外国には父の会社はそれなりの大手商社だと誤解されているようだ。

私は学生時代に、1年カナダに留学をしているので、展示会の時は受付嬢としてバイトをしている。ただ来てくれたお客さんにパンフレットを渡したり、質問があれば聞いて、会社の人に確認して答えてあげたりする仕事だ。父の会社が扱っているのは工業製品だから、私の興味があるところではないけれど、いいお小遣い稼ぎとして展示会には参加している。

今日は朝からなぜかお客さんが多く、対応する社員さんが足りず、父の会社のブースはごった返していた。しかもお昼ちょっと前に父に急用ができてしまい、しばらくブースを出るからと、私に鍵を託し、そのままどこかの会社の人と会場を出て行ってしまった。どこかで見たような小さな鍵だが思い出せず、お昼になってお腹が空いてもブースを離れるわけにもいかず、父から託されたカギを持って途方にくれていた。午後になってお客さんが減ってきても、父が戻らないので私はお腹を空かせて待っていることしかできなかった。

夕方近くなってやっと父が戻ってくると、なんと父は外で昼食を済ませてきたと言う。置いてきぼりにされた私はひどいと訴えたが、鍵を使わなかったのかと父。その鍵は受付の下に置かれていたクーラーボックスの鍵で、そこを開けるとサンドウィッチが入っていたというのだ。鍵だけ渡して行ってしまうからわかるはずないと父に抗議したが、クーラーボックスも鍵も我が家にずっとあるものだから、気が付かないお前が間抜けだと一蹴されてしまった。

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最終更新日:2017/03/13